図書館のBLOG
📚猫を棄てる 父親について語るとき
更新日:2020年08月17日
「猫を棄てる 父親について語るとき」
村上春樹 著
時が忘れさせるものがあり、そして時が呼び起こすものがある。ある夏の日、僕は父親と一緒に猫を海岸に棄てに行った。歴史は過去のものではない。このことはいつか書かなくてはと、長いあいだ思っていた。―村上文学のあるルーツ。
僕は今でもときどきその夙川の家の、庭に生えていた高い松の木のことを考える。その枝の上で白骨になりながら、消え損なった記憶のようにまだそこにしっかりとしがみついているかもしれない子猫のことを思う。そして死について考え、遥か下の、目の眩むような地上に向かって垂直に降りていくことのむずかしさについて思いを巡らす。(エンディング)